クラウドゲートのゲーム用。
ただし、更新頻度は非常に低い。
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・夢主がでます(そして死にます)
・視点がコロコロ変わります
・視点がコロコロ変わります
その時の郊外忍務は大掛かりなモノであった。
くのたまによる情報収集に始まり、六年生、五年生合同での仕掛け、数週間にわたる長期のそれは想定以上にうまくいき、最上の成果を上げたと自負している。
やり遂げた達成感と高揚感を胸に笑顔で帰った忍術学園は、沈黙に包まれていた。
それは、緩やかに始まったそうだ。
初めに気がついたのは一年は組の乱きりしんと小松田さんだった。
なんか変なんだ、こう、何とも言えないけど変なんだよ、そういう小松田さんのそわそわした姿と普段とはすこし違う外の空気、経験豊富な彼らだったからこそその異変に気がつけた。
「これって…」
「だよな…」
「たぶんそうだよ!!」
いつものおちゃらけた彼らからは想像できない真剣な顔に小松田さんもまた何かが起こるのだと悟り職員室へと向かう。
乱太郎が学園長の庵に、キリ丸としんべヱがクラスへと走った。
「学園長先生!外がおかしいです!」
学園長は焦る乱太郎の声に学園長は落ち着くようと伝え、その背後には現在学園に残る最高学年四年生が揃っていた。
「乱太郎、よく気がついた!じゃが焦ってはいかんぞ。ヘムヘム、食堂のおばちゃんに伝え、残る忍たまくのたまたちを食堂に集めよ!四年生は先ほどの話通り各自動くがよい!」
既に四年生には指示が出されていた。
流石学園長先生、と乱太郎が安心したときだったそうだ彼女が学園長の前に姿を現したのは。
くのたま六年生たる自分も使えとそう直訴しに来たのだ。
くノ一教室は最高学年まで残る生徒は少ない。
途中で自主卒業や結婚にて辞めるものが多いため現在在籍する六年生は彼女ともう一人のみ。
相方たるくのたまは長期忍務に出ていて、くノ一教室で残る最高学年は彼女のみだった。
その彼女も昨日かえってきたばかりであった。
学園を護るのは最高学年たる自分の責務でもあると、たとえ女の身であろうとも、帰ってきたばかりであろうともそれは変わらないとそう告げたという。
彼女らしいといえば彼女らしい行動であった。
渋々ながらも学園長もこれを許可し、四年生と合同での籠城戦となったそうだ。
学園長が感知し先生方が調べた情報であれば、これで対応できるとの想定であったそうだ。
要因たるものを先生方が潰し、その間学園は籠城し護る、時間との戦いだが想定外が起こらない限り先生方ならやり遂げられるだろうと試算されていた。
その想定外が起こってしまったのが始まりだった。
流石というか彼女の指示は的確だった。
諜を基本とするくノ一には珍しく彼女は戦忍びとして前線に出られる能力を持っている、とは聞いていたけどそれが本当だったとこの時に初めて理解した。
彼女は僕らの特性特技をしっかり理解してて、学園長先生の指示をより詳しく説明し役割を振り分けてくれていた。
お前たちがすべてを考えるのは、もう少ししてからでいい、そういってすべての指示を出していた。
お前のことは仙蔵からよく聞いていたから、だから安心して任せられるよ、そう笑って彼女は僕の頭を撫でてくれた。
僕はその指示に従い追加の穴をいくつも掘った。
塹壕に落とし穴、その他の罠、一年は組の笹山兵太夫、夢前三治郎の手も借り複雑なトラップも忍たま長屋に仕掛けていった。
一年は組はすごいね、学園に蔓延りだした不安をものともせず、各自ができることをやっていく。
笑顔で、時に失敗しながら、でもいつも通り、いつも以上に精力的に動いてた。
その勢いは他の一年生は二年生三年生にまで波及するんだ。
何処か恐怖を残しながらもみんな笑顔で動いてる。
くのたまたちも食堂のおばちゃんと協力して炊き出しや全員が寝れる寝床を作っていたり、いつもと違うけどいつも通りの日常がそこにはあったんだ。
食堂まわりの罠は多く、そして複雑に、僕の持てる技術全部出して作り上げたたーこちゃんEX’Sは自信作たちで保健委員会三反田数馬提供の薬もいい感じに封じられたと自負してる。
タカ丸さんが食堂で下級生たちと楽しそうにしつつ皆の雰囲気に気を配ってる。
守一郎も食堂で守りを固めつつ気配を探っている。
三木ヱ門は石火矢達を見えない場所に配置し、何時でも使える状態へともっていってる。
滝は彼女について防衛と避難経路を作成、確認、何かあった時は彼女に変わって総合指揮を行うために学園長先生の庵につめている。
先輩方がいないのが心もとないけど、それでも気がつけば何時も間にか側にやってきた彼女が笑って大丈夫って声をかけて行ってくれる、其れだけで下級生たちが落ち着いていくのがわかった。
やっぱり彼女も先輩、と妙に納得してる僕がいた。
いくつもの罠が発動し、いくつもの罠が壊された。
三年生にまで怪我人を出してしまったが、軽い傷であり上級生がいな現場としては最上とは言えないものの上出来の成果だと言えるだろう。
撃退した敵は先ごろ負けた城の敗忍たちであった。
負けた遠因に忍術学園の卒業生がかかわっていた、ただそれだけのことで、八つ当たりと言えば八つ当たりである。
そのようなものたちに負ける我々ではなく、私たちの丁度良い訓練となったと信じている。
出た怪我人も致し方ない、一人は決断力のある方向音痴たる神崎左門が間違えて敵に突っ込んでいったのだ。
あれを止める手段は数少ない。
とはいえ、それを想定しての策だったのだが、その策を越えてくるとはこの滝夜叉丸の頭脳を持ってしても想定外であった。
代わりに他の怪我人は想定の範囲内のかすり傷だったのではあるのだが。
そうかの先輩と話しながら学園長先生の庵へと足を進めていた。
細かい所での失策や失敗はあったものの、なかなかの策だったのではなかろうかと反省点を踏まえ語っていたその時だった。
先輩が私を突き飛ばし、そして、何かが刺さる音がした。
「先輩っ!!!」
思わず、声をあげたのは私の失策、だがそれによってヘムヘムが動き、学園全体が再度警戒に入れたのは上策であった。
敵は複数、しかも手練れ。
必死に考える。
使える残りの罠は少なく、使える人間も少ない。
何より、手練れ相手に前線にて戦えるだけの技量があるものは、せんぱい、のみ。
「大丈夫だ、滝夜叉丸、問題ない。」
肩に刺さった棒手裏剣を引抜き素早く三尺手拭で縛る先輩は笑ってそう言ってのけた。
ニヤリと笑うその顔は、七松先輩を思い出させる獰猛なモノであった。
喜八郎が踏鋤を盾にし体を割り込ませる。
次の瞬間踏鋤へと手裏剣が突き刺さる。
更に投げられた手裏剣は守一郎の南蛮鉤に弾かれあらぬ方向へと飛んでいく。
踏鋤を振り、手裏剣を剥がしつつ今一歩と喜八郎が前に出て近接する。
近接しようとする喜八郎に敵の攻撃が集中する。
踏鋤を盾に回し敵の攻撃を受け止める。
避け損ねた手裏剣が喜八郎の頬を切り裂く。
滝夜叉丸の戦輪がそんな喜八郎の踏鋤の隙間をぬって敵へと飛んで行く。
一つ二つと戦輪が次々と放たれる。
三木ヱ門が隠れた場所から火縄銃で敵を狙い撃っている。
守一郎が南蛮鉤で敵の忍刀を絡め叩き折り、そして蹴られて後方へと吹っ飛んだ。
すかさず喜八郎がそのフォローに回って守一郎が駆け戻ってくる。
僕はそれを見るしかできない。
傷つく彼らを安全な場所で見守る事しかできない。
未だ手伝いの域を出ない僕には委員会の仕事を手伝うことすらできない、だから戦況を見ることだけしかやることがないのだ。
それでも其れは必要なことで、僕がつぶやく状況に合わせて保健委員の子たちが薬草を次々と取り出し必要となるだろう薬を作り出し、包帯や湯を用意していく。
生物委員会の子たちが、敵の隙を作るための毒薬と、其れを放つ死兵となる生物を選び出している。
ごめん、と泣きながら毒薬を括りつけた蟲を敵へと放つ。
鷹に持たせた毒薬は狙い通りに敵方に落ちる。
広がるそれが一時的とはいえ敵の攻撃を止め彼らの動きの援護をする。
潰れた蟲と薬が敵の動きを阻害する。
用具委員会と作法委員会が協力して三木ヱ門や滝夜叉丸へ火薬や武器を次々と運んでいく。
食堂の一部は既には組の子達によるトラップが張られて早々中に入り込めないようになってきている。
他の子達もそれぞれにできうる限りの準備をしてる。
手が空くのは、僕ぐらい。
だから僕は見続ける。
其れもまた必要なことだから。
彼女が血を流し、喜八郎の顔が切り裂かれ、守一郎の顔が歪むみ血反吐をはく、その瞬間をずっと、見守る。
決して目を離さない様に、そして敵がこちらに意識を向けたその時僕は下級生に動けと言わなければいけないのだから。
先輩は気にせず撃てと言っていた。
お前の射撃の正確性は知っていると。
だから私は火縄を撃つ。
先輩の動きを気にせず、敵だけを見て撃つ。
先輩が、喜八郎が、守一郎が作りだしてくれる隙を見逃さず、撃ち抜く。
狙撃は趣味ではない、だが今は此れが一番必要な場面で、最もうまく扱えるのが私しかいないのであれば私がやるのみだ。
池田や羽丹羽、二郭により次々と新たな火縄銃が手渡される。
敵の強さは私たち以上で、ほんの一瞬の隙を見逃せばこちらが負ける。
負けぬためには何を見ても動じず、敵のみに集中する。
たとえ喜八郎が膝を折ろうと、守一郎が吹っ飛ぼうと、先輩の血吹雪きが舞い散ろうと、敵を撃ちぬくのみ。
それが私にに託された仕事なのだから。
敵の刀を折れた、そう思った瞬間俺の体は吹っ飛んでいた。
目の端で隠れていただろうもう一人の敵の刃が見えた。
斬られてたまるかと鈍る腕で南蛮鉤を顔の前に何とか持っていこうとしたとき、先輩の腕が見えた。
血しぶきとともに先輩の腕が飛んでいく、それをものともせず振り下ろされた刀を足蹴にし折りつつ踏み台にして敵へと手にした刀で切り裂いた。
「あと、ひとりっ!」
先輩が持った刀と同時に棒手裏剣を投げる。
刀を振り払った敵は遅れてきた棒手裏剣を避けきれず、その腕に刺さる。
敵の気が逸れた一瞬の隙に銃声が聞こえ、敵の首がへ銃弾が突き刺さる。
「よっし、三木ヱ門よくやった!これで終わりだっ!」
荒い息の中先輩が大きな声をあげる。
本来なら御法度の行為、先輩は自分に注意を向けさせることでその間に俺たちへ状況確認しろと矢羽根音で伝えてくる。
その声に、反応するものはいなかった。
俺の感覚に引っかかるものはなかった。
敵は、すべて倒れた、そう判断できるだけの時間が過ぎた。
滝夜叉丸に矢羽根音でそれを伝える。
「残存なし、全て打ち取りました!」
滝夜叉丸の声が響く。
「私たちの、勝ちだっ」
吠えるように先輩が叫んだ。
皆の歓声が上がった。
そして、次の瞬間先輩が崩れ落ちた。
食堂から、屋根から、忍たまたちが、くのたまたちが駆け出した。
いち早く駆け寄った喜八郎が先輩に火を放つ。
流れ出る血を少しでも減らすために、切れた腕を焼いたのだ。
「喜八郎ありがとう、お前たちは、大丈夫?みなは大丈夫?」
一番の重傷だろうにまず俺たちの心配をし、
「大丈夫です、皆、無事ですっ」
だれの声だったかわからない声が校庭に響き渡った。
その声を聴いてたははと、満足げに弱弱しく笑った先輩は、一言呟き目を瞑った。
「ごめん、さっすがに血を流しすぎたわこれ。」
そこかしこに戦いの後の残る学園内部を見やり俺たちは走り出した。
途中出てきた下級生たちが口々に事態を説明してくれた。
曰く先ごろ負けた城の敗忍が襲ってきたと、罠等を用いて数名の軽傷者を出したとはいえ撃退できたこと。
続けざまに手練れの忍び達がやってきたこと。
四年生と彼女がそれを退けたこと。
そして、彼女が倒れたこと。
そして、そして……。
彼女はよく俺の鍛錬に付き合ってくれていた。
ギンギーンってなんだよと笑いながら俺や小平太の鍛錬にしれッと混じっていたりもした。
槍と刀は他のやつらよりリーチが長くその分扱いが難しい。
如何に細かに、それでいて力を加えて動かすか、幾度も対戦し幾度も語り合った。
男と女の差異はあれど、その差異をうまく埋めるすべを知っていた。
俺や留三郎や小平太と肩を並べて戦うことができる稀有な女性だった。
だから大丈夫だと思った、思ってしまった。
たとえ怪我をしても、笑って、失敗したといつもの笑顔で笑っていると思ってしまった。
だがたどり着いた学園長先生の庵には泣き声とこらえきれない嗚咽にあふれていた。
彼女は学園長先生の庵に寝ていた。
まわりには泣きじゃくる下級生たちがいて、何時もは朗らかな学園長先生が何かに耐えるようにうつむいていた。
既に体は綺麗に洗われ、綺麗な服に着替えさせられていた。
傷だらけで、でもどこか満足げに笑みを浮かべてそこに、いた。
「数馬はよくやったね。上手に縫えてるよ、薬も毒薬もきちんと調合で来てたし流石だね」
助けられなかったと泣きじゃくる数馬を抱きしめ頭をなでながら他の保健委員の子にも頑張ったねと声をかけ合間合間に話を聞きだす。
本来であれば数馬に任せるべきではないことだったのだろう、だがあの時点で学園にいた保健委員の最上級生は数馬だった。
全力で、彼女の傷を縫い閉じ傷薬を塗り込んでいたその時は、まだ彼女は生きていたのだという。
彼女は己の傷のことなど一切言わず聞かず、ただただ皆を心配していたという。
怖がってはいないか、怪我はしてないか、悪化してはいないかと。
貴方が一番の重傷です!!
思わず叫んだ数馬に笑ってそれは申し訳ない、と困ったように言っていたそうだ。
そうして、やってきた滝夜叉丸に学園の事を聞いて、あぁ、もう大丈夫だ、約束守れないのが悔しいが、よかった。
心底嬉しそうにそういって目を瞑り、そのまま彼女は目を覚まさなかったのだと。
先ほど整えた彼女の体を思い出す。
どこもかしこもボロボロで、毒を受けただろう皮膚は黒く変色し、斬り落とされた腕はその前に骨が折れていたのが見て取れた。
それでもなお彼女は刀を握り、学園を、下級生たちを守り抜いた。
どれだけ血を流そうとも、どれだけ怪我をしようとも笑顔を絶やさず声を張り上げ堂々と、たった一人の最上級生として皆を鼓舞し戦い続けた。
素直にすごい、と思った。
僕には僕の、彼女には彼女の戦い方があって、それは決してマネできるものではないけれどその心だけは忘れないと思う。
護るために戦う。
それは僕が目指すものの一つ。
「先輩、立花先輩、僕じゃ、僕じゃ綺麗にして差し上げれないんです」
喜八郎が泣いていた。
彼女の枕元、作法委員会の化粧道具を並べて泣いていた。
震えるその手は激戦の名残か、はたまた想いのせいか。
確かに喜八郎もまた包帯だらけで怪我人だ、だが私が教えを受けた喜八郎ができないはずがない。
未だ、受け入れることができない心がそうさせるのだろう。
「いいのだ喜八郎、それは私の役目だ」
彼女の側を譲り横にずれてくれた喜八郎の眼には涙がたまっていた。
退いた場所に座り然りと彼女の顔を見た。
先ごろ見たときより髪が短くなっている。
整っているのはきっとタカ丸がやったのであろう。
傷は塞がれ丁寧に縫われ繋ぎ合わされていた。
「全く、顔は女の命と言っただろう、何故傷だらけなんだこいつは」
触れた傷だらけの頬はすでに冷たくなっていた。
「私には顔に傷を絶対つけるな!などと言っておいて自分は傷だらけになるとはいいのか其れは?いや、許せないね」
彼女の肌色に合わせて調合された白粉は、藤内の手によるものだと喜八郎が伝えてくる。
上手くなったなと後で伝えねばならぬ、そう思いながら彼女の頬に白粉を塗っていく。
丁寧に傷を隠し、変色した皮膚を隠し化粧をしていく。
「全く、喜八郎と浜が見つけてくれなければ片手をなくしたまま見送る羽目になっていたのだぞ??」
体は、顔以上にボロボロだったと縫い合わせた三反田と、仕上げた伊作がいっていた。
最後に少し悩んで懐から取り出した紅を手に取る。
何時だったかの忍務の折に、私の女装を見てこっちが似合うと渡された紅は、やはりおまえにも似合うではないか。
此度の忍務でも活躍したそれを、紅筆に取り彼女の唇に乗せ薄く頬紅をつけてやればいつもの彼女がそこにいた。
「…今度、仙子と茶に行くんじゃなかったのか?」
モノ言わぬ彼女は、いつもと変わらぬ姿でそこに寝ていた。
ぼこぼこの地面に崩れ落ちた長屋、これは直すのに時間がかかるな。
そう思いながら学園内を歩く。
想定以上に追加された塹壕や蛸壺は後で場所を確認し、崩れた長屋の再建は最優先で、予定日数と資材を試算しつつ見て回る。
下級生の長屋につけられた罠は後で外すとして、俺たちはしばらく仮住まいだなと思ったその時、運動場の片隅で刀を見つけた。
ボロボロのそれは、彼女に頼まれて俺がよく研いでいた刀だった。
刃こぼれはし、折れかかり、折れ曲がったそれは間違いなく彼女の愛刀だった。
「御役御免になったら、飾っておくていってたのにな」
学生時代を支えたその刀は、流石に卒業後に使うには心許ないと新たな刀を慣らしている最中だ、そういっていた。
「できりゃ、直してやりたいんだがな」
持ち上げようと触れた柄は赤黒くぬらりと濡れて冷たくなっていた。
「なぁ長次、あいつ笑ってたってさ、最後まで」
「うむ」
「なぁ長次、あいつ安全だって確認とれるまでたっていたんだってさ、最後まで」
「うむ」
「なぁ長次、何であいつは起きてこないんだろうな?よく頑張ったなってほめてやりたいのになんで目を覚まさないのだろうな??」
「小平太」
「なぁ長次、あいつ約束守れないのが悔しいって、覚えてたんだな、あの約束」
「長次、俺は、俺はっ」
「小平太っ泣けばいい、怒ればいい。ほめればいい、叱ればいい、今しか、もうできないのだから」
彼女と出会ったのは小平太と友になってすぐのころだった。
俺の幼馴染なんだ!
そういってくのたま教室から引っ張ってこられた彼女は苦笑を浮かべながら小平太がお世話になってます、そう私に頭を下げた。
小平太の無茶に笑って付き合い、私の特訓に付き合ってくれ、それぞれの主となる武器について真剣に議論したのを覚えている。
時に小平太を叱り、時に小平太を褒め、どう考えても幼馴染というより姉や母親に見えた。
そう彼女に伝えたら、其れは長次も同じではないか、と笑って言われた。
お互い小平太で苦労するな。
そういったら、でも楽しいよな。
そう返され頷いたのを覚えている。
だが、時折小平太と一緒にわなを仕掛け、いたずらを仕掛け、小平太とともに大笑いをしつつ逃げていた。
彼女と小平太が手を組むと私の手には余る。
そういえばなら一緒にやろう、と二人に手を引かれた。
文次郎をからかいながら仙蔵と共に寝かしつけ、女装した仙蔵とともに楽し気に街に繰り出し、小平太に付き合ってマラソンそし、その途中見かけた薬草を伊作に渡し、留三郎に刀の研ぎを頼み、私と南蛮書の解読をし、小平太と遊ぶ。
性別の違いなど越えて、違いがあったからこそわかることを伝えあい教え合い、共に歩んできた。
彼女は私たちの友であった。
そして彼女は……。
あいつが逝った。
学園を護って、逝った。
私のいない間に、いってしまった。
あいつは生まれたときから私の横にいた。
産後の肥立ちが悪く床から中々起き上がれなかった隣家のあいつの母親。
そんなあいつの母親は私の母親の親友で、私の母親は快く親友の子供にも母乳を分け与え、分け隔てなく面倒を見ていた。
そんなころからの付き合いだった。
だから物心つくころにはすでにあいつは私の側にいて、どこにいくのにも一緒だった。
あいつは私で、私はあいつだった。
だれよりも私の事を知り、私も誰よりもあいつのことを知っていた。
気がつくと一緒に寝ていて、双方の母親が笑って仕方がないと上掛けをかけてくれていた。
私が忍術学園への進学を決めたときも、笑ってなら自分もとついてきてくれた。
時に叱られ、時に共に山野を駆け巡った。
あいつがいて、長次がいて、そして私がいて、悲しい時、苦しい時、辛い時、楽しい時、幸せな時、いつも一緒にいた。
二人でいるのは楽しくて、長次と三人になればもっと楽しかった。
言葉にしなくともあいつと長次には伝わって、その二人の側は本当に居心地がよかった。
卒業した後も、あいつは変わらず私の側にいただろう。
何時までも一緒だっただろう。
どうせなら長次も誘いたい、そういった私に笑って、其れはいいと言ったのもあいつだった。
そんなあいつは大切な私の半身で、私の許婚、だった。
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